給料の差押えと個人再生
1 給料の差押えが個人再生手続によって受ける影響
給料の差押えを受けている状態で,個人再生の手続を行う場合,個人再生との関係で給料の差押えはどうなるのでしょうか。
以下,個人再生手続の各段階に沿って説明します。
2 申立てまで
個人再生手続の申立てまでは,給料の差押えを止める手段はありません。
3 申立て後,開始決定まで
法律上,裁判所は,再生手続開始の申立てがあった場合において,必要があると認めるときは,利害関係人の申立てにより又は職権で,再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間,再生債権に基づく強制執行の手続で,再生債務者の財産に対して再生債務者の財産に対して既になされているものの中止を求めることができると定められています(民事再生法26条1項2号)。
したがって,給料が差し押さえられている状態で個人再生手続の申立てをした場合,差押えの中止命令の申立てを検討することとなります。
ただし,実務上は,申立て後速やかに開始決定が出されるように,4で後述する当然中止となるよう働きかけることが多いです。
4 開始決定後,再生計画認可決定確定まで
⑴ 強制執行の当然中止
再生手続開始の決定があったときは,再生債務者の財産に対して既になされている再生債権に基づく強制執行等の手続は中止します(民事再生法39条1項)。
したがって,開始決定がなされれば,執行裁判所への再生手続開始決定書の提出によって給料の差押えは中止します。
もっとも,中止によって差押債権者への支払いは停止しますが,この段階では債務者本人が給料の支給を受けることはできません。
⑵ 取消申立て
裁判所は,再生のため必要があると認めるときは,再生債務者等の申立てにより又は職権で,担保を立てさせて,又は立てさせないで,中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の取消しを命じることができます(民事再生法39条2項)。
そこで,差押債権者が任意に給料の差押えの取り下げをしない場合,裁判所に対して給料の差押えの取消しの申立てをすることになります。
給料の差押えの取消決定がなされたら,再生債務者は,その後,中止決定によって留保されていた分も含め,給料の支給を受けることができるようになります。
5 再生計画認可決定確定後
再生計画認可の決定が確定したときは,中止した強制執行等の手続は,その効力を失います(民事再生法184条)。
したがって,上記2の取消決定がなされなくとも,再生計画認可決定確定後は,再生債務者は,その後,中止決定によって留保されていた分も含め,給料の支給を受けることができるようになります。
6 再生計画不認可の場合
再生計画が不認可となった場合,中止していた給料の差押えは,再び続行します。
一方で,給料の差押えが取り消されていたときは,債権者は,再度,給料差押えの申立てをする必要があります。
7 柏で個人再生をお考えの方へ
弁護士法人心では,個人再生やその他の借金問題を得意とする弁護士が個人再生について担当させていただいております。
個人再生は専門性が高く,弁護士であれば誰でもできるというものではありません。
柏にお住まいで個人再生をお考えの方は,弁護士法人心 柏法律事務所までご連絡ください。
個人再生に詳しい弁護士に依頼すべき理由
1 はじめに
個人再生は,裁判所の手続で行う債務整理の手段ですが,ここでは,個人再生手続に詳しい弁護士に依頼すべき理由をご説明します。
なお,個人再生には,小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続があり,住宅ローン特則(住宅資金特別条項)は双方の手続で利用することができます。
2 個人再生を債務者本人で行う場合
わが国では,弁護士の選任を強制する弁護士強制主義は採用されていませんので,個人再生手続を債務者ご本人で行うことは可能です(自己破産も同様です)。
そして,個人再生を債務者本人で行う場合,弁護士に依頼した場合に必要となる弁護士費用がかからないというメリットがあります。
しかし,以下のようなデメリットもあります。
- ① 債権者からの督促が止まらない
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これは個人再生だけではなく自己破産や任意整理にも当てはまりますが,債務者ご本人が債務整理を行う場合,債権者からの督促は止まりません。
もちろん,個人再生を申し立てた後は債権者からの督促は止まりますが(裁判所が交付してくれる事件受理票など申し立てたことが分かる資料を債権者に送付する必要があります),個人再生の申立てにはある程度の時間がかかるのが通常ですので,その間は債権者からの督促に対応する必要があります。
- ② 申立てに必要な書類を自分で調べて準備する必要がある
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債務者本人が申し立てを行う場合の書式を準備している裁判所もありますが,裁判所ではその記入方法を手取り足取り教えてくれるわけではありません。
また,申立てに必要な添付書類の一覧表を配付している裁判所もありま すが,全件に共通の必要書類(住民票等)以外にどのような書類を準備する必要があるのかということは自分で判断する必要があります。
さらに,手続開始後に作成し決められた期限までに裁判所に提出しなけれ ばならない再生計画案もご自身で作成する必要があります。
再生計画案作成の際は一定のルールに従う必要がありますが,債務者ご本人で手続きを進めている場合は,そのルールをまず理解した上で作成しなければなりません。
- ③ 個人再生委員とのやり取りを自分で行う必要がある
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債務者ご本人で個人再生の申立てを行った場合はどの裁判所でも個人再生委員が選任されますが(なお,個人再生委員の費用は債務者ご本人が負担する必要があります),個人再生委員とのやり取りも債務者ご本人で行う必要があります。
個人再生委員には弁護士が選任されますが,土日祝は事務所が休みであ ることが通常ですので,平日の営業時間内に対応する必要があります。
3 個人再生に詳しい弁護士に依頼した場合
個人再生に詳しい弁護士に手続きを依頼した場合は,債権者からの督促が止まるのみならず,申立書や再生計画案などの書類作成,準備もスムーズに進みます。
また,個人再生手続を利用する上で問題点がある場合には,それを解消するための方策を直ちに執ることが可能です。
さらに,個人再生委員とのやり取りも弁護士が行うため,平日の営業時間内に対応する必要はなくなります。
たしかに,個人再生の弁護士費用は自己破産よりも高めに設定されていることが多いですが,手続の煩雑さ,複雑さを考えますと,個人再生に詳しい弁護士に依頼した場合はその費用を上回るメリットがあるのではないかと考えらえます。
柏で個人再生をお考えの方は,弁護士法人心 柏法律事務所までご相談ください。